08:王子の恋
※OROCHI時間軸

触れられる感覚がたまらなく好い。
三成の指が舌が弄る感覚に曹丕はどうしようもなく
長い睫毛を慄わせ、そっと息を吐いてから、
限界になったものを吐きだした。
「・・・っ」
んん、と身を捩れば三成が曹丕を抱き込むように
寝台に倒れこむ。
「もう・・・やめよ」
無理だと訴えれば三成は笑い、「当たり前だ」と
優しく云い、どうやら今夜は部屋に戻るつもりは
無いらしい、此処で寝る気かと少し愚痴を零してから
二人まどろむように寝入った。

ぼんやり目を開ければ朝だ。
不意に隣に手をやれば三成はいないようだった。
しかしまだ温かい。反対側を向けば、
三成は着替えているようだった。
それを朦朧とした頭で眺める。
決して恰幅がいいとは云えない身体だが、
見た目より鍛えられていて美しい。
長くしなやかな手足が動く様が綺麗だった。
亜麻色の髪が朝陽に反射して何処か眩しい。
曹丕とて寝る相手くらいは選ぶ。
三成は頭も見目も良かった。
無論思惑があって近付いたのは曹丕だ。
しかし気付けば三成の真摯な態度に呑まれている。
流されていると云えなくも無いが、今はそれを
何処か愉しんでいるのも確かであった。
三成らしい几帳面な仕草できっちりと帯を締めると
三成は曹丕の方へ向かってきた。
まどろみのままそれを確認すると
三成は静かな聲で「起きたか」と云う、
それに答えようと身体を捩るが、どうにもまだ
頭が起きない。
それを察したのか三成は、少し笑い、
優しく曹丕の頬に触れた。
少し冷たいのは顔を洗ってきたからだろうか、
まだ朝は冷える。
そっと触れられた手の冷たさに頬を寄せれば
優しく髪を撫ぜられた。
この心地良さがずっと続けばいいと、
ぼんやり思う。

「もう少し寝ていてもかまわぬぞ、あとで起こしてやる」
優しく云われれば頷きたくもなるが、
曹丕は首を振った。
「否、起きる」
身体を起こし、三成から衣服を受け取った。
朝議に遅れるわけにもいかない。
互いにまだ忙しい身だ。
甲斐甲斐しく自分を世話をする三成を見つめ
曹丕は想う。

その長い指も、優しい仕草も、
普段は憎まれ口を叩くくせ、こんな時ばかり優しい
その口調も何もかも皆、たまらなく愛しい。
だから想う、

「ほら行くぞ」

差し出された手に、光の中差し出すその人に
この手がずっとあればいいと、
想うのだ。

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