10:ぶかぶかのシャツ
※パラレル幼馴染

理不尽だ。
不公平だ。
だってこんなの許せるわけが無い。
三成は憤りのまま、どたどたと部屋へ上がった。

三成と曹丕は互いに向かい同士の幼馴染で
いわゆる極道の家系であった。
双方とも睨みあうというわけでも無く、
不思議と子供同士が行き来するような家風であったので、
それを当然として、互いの家もそれなりに良好に
三成と曹丕の中を育んでいった。
中学にあがったばかりの今でも毎日一緒だったし、
週末にもなれば互いの家を泊まり合う。
この週末も三成は曹丕の家に泊まりに行っていた。
日曜には曹丕の叔父が曹丕の弟達も一緒に三成も
USJに連れて行ってくれるというので気合も充分だ。

前日から二人でアトラクションのチェックをしたり、
何を食べるかと相談し合ったり、
下準備も万全で、朝も早くに起きて、
眠いだ、早いだと云う夏侯惇を引きずり出して、
司馬懿を伴って行ったばかりだ。
これ自体に何の落ち度も無い。
曹丕も三成も大変楽しんだし、
夜のパレードまで見て、沢山土産も買った。
写真係と化した司馬懿に呆れるほど撮影も
してもらったし、帰る頃には大人達がぐったりなほどで
あったので子供のパワーは計り知れない。

そうして機嫌良く帰ってきて、
三成ははた、と気付いた。
「殿?どうしたんです?」
様子を見に来た家人の左近が顔を出す。
「何かあったんですか?」
沢山の土産物を床にばらまいているので
それを端から片付けながら左近が問うた。
三成はわなわなと身体を慄わせ、
左近に叫ぶ。

「子桓が・・・」
「はあ、曹家の坊ちゃんがどうかしたんですか?」
三成は左近を見つめて、叫んだ。
「俺よりでかくなっている・・・!」

「は?」
三成と曹丕は元々背丈も似通ったりであった。
幼い頃など、曹丕の方が小さかったくらいで、
しかし、ふと気付いた。
昨日、曹丕の家で借りたシャツ、
俺のより大きくなかったか?と、
「そう、腕が余ったんだ!あの時は気にならなかったけど・・・」
そんな!まさか!と三成が叫ぶ。
「この間の測定の時はまだ同じくらいだった!」
「そりゃまあ、成長期ですからねぇ、お二人とも・・・」
まだ13である、伸びて当たり前である。
「そりゃ0.5センチの差はあったさ、子桓の方が俺より気持ち
でかかった、しかし、なんだ、どうしてだ!?」
いつから!?WHY!?と
三成が取り乱す。
そんな、あの子桓が、俺より大きくなるなんて、
有り得ない、
そんなの有り得ない!
赦せない!
とひとしきり叫んでから、
ば、と左近に振りかえった。

「左近!」
「はい?」
「俺は大きくなる男だな」
そう云われて、左近は思わず吹き出しそうになるのをどうにか堪えた。
「ええ、ええ、殿はこの左近より大きくおなりになる男ですよ」
器が、と云いかけて、そこは黙る。
そこは思い遣りである。
「明日から牛乳を沢山用意しろ!あと他に背が伸びそうなやつを!」
はいはい、と頷きながらついに堪え切れず、左近は
三成に隠れて肩を震わせた。
「それよりお土産、秀吉様やおねね様にお渡ししなくていいんですかね?」
その言葉に、は、と気付いて、
三成はお土産を開け始める。
「お前の分もあるからな!」
はいはい、有難う御座います。
と返してから左近は明日から、背が伸びるよう
努力しましょうかね、と弁当の献立を考え始める。

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