003:邪
※三丕前提、遠呂智×丕

褥から出ようとすると躰を捕われる。
触れられただけで厭な悪寒が曹丕の背筋を奔った。
妖魔と寝る。しかも相手は魔王だ。
おぞましいような吐き気も最初の三度を
遣り過ごせば耐えられる。
このところ、この魔王の遊戯は手酷いのでは無く
専ら曹丕を感じさせることになっているらしく、
執拗に求められ、嬲られる。
時には怪しげな薬を使って前後不覚の状態に
持ち込むこともしばしばだった。
現に今も達したばかりだというのに
曹丕の腰を掴み再び揺さ振る。
その手から逃れるように身を捩っても
引き戻され狂わされるのが常だった。

「っ、ぅ」
絶頂を極めたばかりだというのに
こうも執拗に責められれば身体はもたない。
しかし妖魔にそのようなことを云っても無駄である。
曹丕はまだいい、魏の王太子としての立場から
まだ、価値がある。
無論、人質などと生ぬるいものでは無い。
争乱を起こす為の魔王の道具だ。
最もそれでも飽いたのなら
魔王は曹丕を犯し殺すかもしれない。
現に何人も何処ぞから連れられた者たちが遠呂智の褥で
死んでいるとも聴く。
常に死と隣り合わせの情事など、全く以って御免である。
いっそ身体に飽きて戦場にでも出して呉れればいいが、
いまのところその気配も無かった。

「慣れているな」
魔王の言葉に
曹丕はそっと口端を歪にゆがめ魔王を見る。
「厭に慣れている」
まるで、と魔王が続ける。
「まるでそれが日常であったように」
その言葉にいよいよおかしくなって
曹丕は哂いたくなった。
「それで?」
魔王の手を乱暴に払い曹丕は
その薄い目で魔王を射るように見つめる。
「そうだったとしてそれが何だと云うのだ?」
「つまらぬのなら離せ、それとも私を殺すか?」
曹丕の言葉に遠呂智が曹丕の肩を噛む。
緩やかに噛むとはいえ、少し力を入れれば肩は
簡単に砕けるだろう。
遠呂智は肩を食み、舌でその肌を味わい、
一方下肢では執拗に曹丕の内部を犯す。

「それも悪く無い、が」
ぬるりとした感触が下肢を伝う。
遠呂智のものだ。
放たれた尻の間から遠呂智のものがどぷりと
溢れる。目も当てられない醜悪な己の無様に
曹丕は哂った。
「今暫く我を愉しませよ」
割り開かれた脚の間に再び宛がわれたおぞましい異物に
これから与えられる感覚を識る。
受け入れる感触に、ただ聲を堪え、
目を閉じる。

目を閉じて、それが過ぎ去るのを待つ。
煩わしい感触を忘れようと思考する。
固く閉じた暗闇の先に
何故か思い浮かんだのはあの男、
石田三成だった。

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