011:音
※パラレル現代。

ピロリーンと遠くでなんとも云い難い音がするので
身動げば、ああ、と残念そうな聲がした。
それでうっすら眼を開ければ三成だ。
ソファでくつろいでいる内にうたた寝をして仕舞ったようだ。
目の前の三成は未だ曹丕が覚醒しきっていないを良いことに
携帯カメラを曹丕に向けて構える。
あの音は携帯のカメラの音だったのか、と
眉を顰めてやめろと云う代わりに手を挙げれば、
三成が「ああ、勿体無い」と残念がった。
何が勿体無いものか、と呆れ顔で三成を見遣れば
流石に懲りたのか「すまんすまん」と笑い、
それから珈琲を淹れようと三成がキッチンへ向かった。
それをぼんやり眺めながら自分も携帯に三成を撮ってやろうかな、と
ふと思った。

「・・・こんなにあるのか・・・」
後日、偶然にも風呂へ入った三成と入れ違いに帰宅した曹丕は
ソファの上に投げられている三成の携帯を見つけた。
他意はなかったがなんとなく画面を開いてみると
いきなりだ。
曹丕の写真が画面一杯に在るその様に流石に渋面して、
それからフォルダを確認する。
ロックがかけられていたが、曹丕は三成の思考を
読みきっている。簡単なものだ。
案の定二度目のパス入力で突破して仕舞った。
これほどわかりやすいパスワードなんて返って危険ではないかと
思うが中を見れば全て隠し撮りの曹丕の写真である。
よくもこんな角度で撮れたものだと半ば呆れ半ば
仕方無いと思いつつ、何気ない顔で曹丕はそれのボタンを押した。

「帰ってたのか曹丕、・・・ってお前・・・っ!!!」
風呂からあがった三成は腰にタオルだけという格好だ。
その三成は曹丕の手にある自分の携帯を確認して
嫌な予感が的中したという顔をした。
曹丕はふふん、と勝ち誇った笑みを浮かべ
三成を見下した。
「残念だったな、三成、私の画像は全て削除させて貰った」
呆然とした三成が次に発した言葉は最早悲鳴に近い。
「目障りなのだよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
悔しがる三成の様を曹丕は満面の笑みで
己の携帯カメラで撮影してその場は終わった。
しかし曹丕は知らない。
床に突伏する三成が悔しい悲鳴をあげて顔を覆っている下で
笑みを浮かべていることに。

( 残念だったな、曹丕! )
( 全て俺のパソコンにコピーしてあるのだよ!!! )


二人の攻防戦は当分終わりそうにはない。

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