※三丕パラレル学生[ 寮 ]ものですのでご注意下さい。
元ネタはこちらのお題より→ [ 20:マネージャー ]


曹丕は綺麗だ。
毎朝、毎日、飽きもせずこの隣の男を眺めるのが
三成の日課であった。
否、日常と云っていい。
かくいう三成も相当な面構えをしていたが、
それはこの際三成にとって問題では無い、
問題なのは目の前の何かの悪夢か冗談かと思うかほど
やたら綺麗な男の方だった。
男は三成に振りかえり、さらさらと流れてくる己の長い髪を
面倒臭そうに後ろへ払って、三成行くぞ、と口を開いた。

三成と曹丕は同じ部活だ。
バスケ部である。別段要員としているわけでは無く、
補欠とレギュラーの間を行き来しているようなポジションを
獲得している。その上、部員の方は三成であって、
曹丕は部のマネージャーであった。
何で男がマネージャーかと云うと、それは勿論この学校が
男子校であるからに他ならない。
男以外に誰がマネージャーをするというのか、
女がいようものなら、全校をあげての取り合いになること
請け合いだろう。
つまりは此処はそんな男子校の話であり、
あくまで男と男の不毛な関係の話でもあった。
その辺りをご了承頂きたい。

私立であるこの男子校は、創立百年という長い歴史を持つ
折紙付きの有名な名門校であり、その校風は規律と歴史、
そして少々変わった校風を保ち続けている稀な学校であった。
一般、良家問わず幅広く受け入れている寮制の学校で、
勿論必ず寮に、というわけでは無かったが、全校生徒の
実に四分の三という人数がそれぞれ三つの寮に別れて生活をしている。
そして三成と曹丕はその寮において一年の時から同室で過ごしている。
つまるところルームメイトの関係であった。
一年の時、ある理由で同じ部屋に配され、其処から始まった
奇妙な縁であったが、三成はなんとなく曹丕とウマがあっていたし、
曹丕自身もその件については言及はしないが、恐らく三成との
生活にさしたる不満も無く、それなりに快適に生活をしている。

今は部活も終え、後片付けをし、
曹丕と寮へ帰るところであった。
一年の時こそ、三成より背が低かった癖に、二年にあがった途端
三成を5センチも追いぬいて仕舞うあたり、実にこの男らしいが、
(逆に近頃それが三成の大きな不満であった、やりきれない)
前を歩く曹丕のすらりとした後ろ姿を三成は気に云っている。
寮まで十分という距離をできるだけゆっくり三成は曹丕の後を追った。
しかし不意に曹丕が振り返る、三成は曹丕と目を合わせた。
「歩くなら隣を歩けばよかろう」
少し不満を乗せた言葉に三成は微笑を零す。
何のことは無い、二人でいるのにまるで一人でいるようだと
文句を云っているのだ。
あの曹丕が、
到底その冷たい容姿と双眸からは想像もできないだろうこの男から、
しかしそれは三成が曹丕と築いた信頼であり、
三成にとってこういった曹丕の些細な我儘が何より愛しい。
三成は、心得た、と応え、曹丕の隣に歩を進めた。
寮までの道のりあと5分、
傍らの存在を何よりかみ締めながら、
三成と曹丕は二人歩き始めた。


01:寮生活の話

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