「・・・っ」
がた、と音を立てて床に押し倒された状態で
曹丕は三成を受け入れていた。
熱い舌が曹丕の口内を隈なく蹂躙する。
その心地良さに曹丕はうっすら目を細めた。
「っく、あぁっ・・・!」
三成が奥を抉るように揺さぶれば
じわじわと上がってくる快感にたまらず
曹丕は聲をあげた。
その瞬間三成が弾けたのを感じる。
そのまま抜かずに二度三度激しい律動を繰り返されて
曹丕も果てた。
「は、ぁ、、っ」
びゅく、と慄えながら吐きだされるそれは断続的に
確かな快楽を以て曹丕を融かす。
心地良さに寝入るように、三成の唇を求めれば、
すぐに欲しているものが得られた。
三成に抱きしめられて曹丕の意識はそのまま落ちる。
三成に融けていく感覚にいつまでも酔いしれていたいと
願うのは、愚かなこととわかりながらも
抗うことなど出来ないほどの安息であった。


冬休みに入って、流石に寮には居られない。
曹丕は年末には帰ると司馬懿に連絡だけして、
三成の家に身を寄せていた。
「曹丕、大丈夫か?」
少し無理をさせたと、三成が曹丕の肩に毛布をかけ直せば
曹丕はうっすら微笑んだ。
「構わん、好かった」
短く返答され、三成はその頬を撫ぜた。
寒い部屋で事に及んでそのまま寝入った所為か、
曹丕は朝から少し熱があるようだった。
流石に自嘲せねばならんか、と胸の内で反省し三成は
曹丕にみかんを剥いた。
曹丕はその様子を眺め、掛けられた毛布に顔をうずめる。
幸せだった。
「そういえば先程お前の部下共が見舞に来た」
「なんだと?」
三成の家は極道である。
由緒正しきとまではいかないが、筋金入りの極道であることは確かであった。
養父である秀吉がそうであるのだから三成には選択権など無い。
当たり前に将来この業界に就職することは決定した身であった。
故に三成は此処では若である。
側近の左近だけはいち早く「殿」と三成を呼称したが、
基本的に三成は、三成坊ちゃん、とか若とか呼ばれていた。
「あいつら、余計なことを!何かされなかったか?」
大慌てで曹丕の身体を確認するが何処にもおかしな跡は無かった。
無論あったら殺す、しかし何の用で?と三成が問えば曹丕は
ふふ、と笑った。
「若を宜しく頼みますだと、ついでに占しめた」
にやりと曹丕が笑い、出したのは一升瓶だ。
「花札でな」
「あいつら曹丕の実力を知らなかったな」
恐らく占しめたのは酒だけでは無いだろう。
有り金殆ど剥ぎ取られたに違いない、
半ばそれに同情しながらも、自分のいないところで
曹丕と一緒に居るなど許せるものでは無い、
いい薬だ、と三成は哂った。
「小遣いも増えたようだな」
「後で何か美味いものでも食べようではないか」
悪戯が成功した子供のように笑う曹丕が三成は愛しい。
「その前にまず熱を下げることだな」
そう云って曹丕の額に掌を乗せれば、
曹丕は心地良さそうに目を閉じた。

「何、お前が付きっきりで看病すれば直ぐ治るさ」

そんな甘えを吐く曹丕が愛しくてたまらない
不器用で甘え方一つ知らなかった曹丕に
それを教えたのは三成だ。
うっすら涙が出そうになるのを堪えながら
三成は曹丕に微笑んだ。


10:或る冬の日

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