※三丕パラレル怪盗ものですのでご注意下さい。
元ネタはこちらのお題より→ [ 18:怪盗 ]


01×予告状

その予告状が届いたのは朝方、まだ警察の業務が
始まって間もない時間だった。

『 予告状 
 今宵、赤い満月を
 戴きに参上します 怪盗皇子 』

質の良い、上品な紙にどういった方法で書かれているのか
わからないが、綺麗な明朝体で、記されているのは、
犯行予告だ。
怪盗皇子はこのところ世間を騒がせている、泥棒であった。
否、怪盗と名乗るからには、怪盗なのである。
その優雅な所作とすらりとした均整の取れた身体、
そして逃げ去る時にする洗練された一礼は、
あらゆる意味で世間を圧巻した。

「またしても怪盗皇子か・・・!抜け抜けと!」
石田三成警部補はぎり、と唇を噛んだ。
「殿、落ち着いて」
お茶でも、と湯呑を差し出したのは三成の配下の
左近だ。三成はまだ学徒にして、刑事局長の父を持つ。
その優秀な頭脳を駆使してありとあらゆる犯罪者を摘発してきた
つわものでもあった。
そんな三成の手をかい潜って、まるで挑戦するかのように
鮮やかな手口で、犯行を行う怪盗皇子は、目下三成の最大の敵である。
「赤い満月・・・孫家の秘宝と云われる宝石か・・・!」
赤い満月と呼ばれるそれは、孫家に伝わる家宝の一つである。
世界最大級の大きさを誇るルビーのことだ。
「至急、孫家に連絡を!警備を怠るな!」
三成は立ち上がり、孫家へと奔る車へ乗り込んだ。
左近はその様子を見届け、溜息をひとつ、

「やれやれ、今日も、追いかけっこですかい」
怪盗皇子との追いかけっこは既に十三回、
しかも十三勝零敗、警察は煮え湯を飲まされ続けている。
厄介な相手も居たものだ。
盗んだ品を流していない様子なので、足取りさえ掴めない。
犯人の特徴さえもわからない相手なのだ。
「シルクハットに、片眼鏡、黒い外套に、黒いタキシード、
紳士の装いの怪盗ねぇ・・・」
特徴と云えば、全体的に美しいということだけだ。
遠目でもわかる、整った様相、しかしこれだけでは
誰が犯人だと云われてもわかるものでは無い。
一時期はあるタレントがそうでは無いかと噂されたこともあったが
どう考えても他人であった。
「これじゃ隣に座っていてもわかりゃしねぇ」
殿がムキになるのもわかる、と頷いてから、
左近も近辺の警備を固める為に、三成を追って、警察署を出た。


さて、此処に警察署前、喫茶店のテラスに優雅に座る男が一人。
『怪盗皇子華麗なる犯行!』と記された新聞を手に珈琲を啜る。
「相変わらず、御苦労なことだ」
にやりと笑った男こそ、警察が躍起になって捜している男だということを
誰も知らない。

「今夜を愉しみに、石田三成警部輔、そして警察署諸君」

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