03:腹ちら
※パラレル/こんな関係で20 のお題→ 08:友達 続き。

先程から目に痛い。
三成はちらりともう一度目線をやれば、
やはり、そうだった。
しかし、それに何か物を云うだけの
勇気が無かった。意気地無しである。
というのも相手があの曹丕だからである。
夏休みに、では、と互いの家で遊ぶようになって、
当然のように泊ったりもするわけだったが、
どうにも三成は曹丕に弱かった。
元より面食いである。
曹丕の美貌は云わずもがな、で
多少自分の顔も見栄えがするとわかっていても、
目の前に自分の好みの顔の男が居るのだ、
見れば見るほど鑑賞に値する男は、
その造りもののような顔で三成に無茶を云う。
今日もそれに付き合って、
こうして朝の早くからアナログゲームに付き合っていた。

「しかし寝るか・・・」
昼過ぎになって、突然眠いと云いだして
曹丕が寝て仕舞ったので
手持ち無沙汰になった。
どうやら昨日は遅かったらしい。
三成との時間を作る為に無理をしたのだろうということが
わかるだけに起こすことなど出来はしない。
朝いつものように曹丕の家へ顔を出せば、
射抜かれるような眼で司馬懿に無言の圧力を
受けたのもその所為なのだろう。
曹丕は曹家の跡取りとして多忙の身である。
しかし三成との時間を作ってこうしてゲームに興じるのが
好きな男だった。
三成も曹丕以上に親しい友人などおらず、
不思議と馬が合った。
融け込むように曹丕との付き合いが続いているが、
目の前の友人にはこうして振り回されることが多い。

眠って仕舞った曹丕の顔を眺めれば、
疲れているのか、少し痩せたようで、
疲労の色が濃い。
白い肌にくっきり陰影が残るほどなので、
些か心配になる。
その上曹丕が先ほど寝返りをうった拍子に
シャツが捲れ、白い肌が見えて仕舞っている。
薄い腹が寝息で上下するのを見て、
なんとも云えない心地に駆られる。
( 参った・・・ )
そっと触れてその肌を撫ぞればどんな感じが
するのだろうと思わず想像して仕舞う。
しかし、出来る筈も無く、三成は首を振った。
( この家でそんな凶行に及べば、俺は殺される )
あの司馬仲達や、夏侯の者や曹丕の兄弟に
確実に殺されるだろう。
ぞ、として、三成は首を振った。
迷いを振り払うように、三成は立ち上がり、
畳まれてあったケットを広げ
曹丕にかける。

「俺も寝るか・・・」
その隣に身体を横たえ曹丕を見る。
長い睫毛に穏やかな寝息。
これを聴くのは今のところ自分だけの特権である。

http://zain.moo.jp/3h/