16:入浴中にて・・・
※こんな関係で20のお題[01:双子/ドッペルゲンガー]設定

久しぶりに曹家の土地に足を踏み入れた。
無論本家では無い。本家など三成にとっては面倒でしかない。
養父であった曹操はともかくとして、その他の者が不穏であるし
慣れ合いたいとは思わない。
しかし此処は曹家の中でもとりわけそんな色が薄い場所であった。
曹丕のマンションである。
双子の片割れである曹丕は曹家の跡取りとして多忙な身分だった。
それに合わせて都内各所に曹家の家がある。これもその一つだった。
なるべく学校に近いところにと宛がわれた一室は、
まだ新築の匂いのするような場所だった。

曹丕と三成は複雑な関係にある。
似ていないと再三揶揄される二卵性の双子であるが、
母の再婚の折に曹丕は曹家の跡取りとなった。
ほどなくして母は養父と離婚、その際跡取りの曹丕は
そのまま曹家に籍を置き、三成は母と共に新しい養父に
養育される身分である。こうした込み入った事情から
周りからはまず兄弟にもまして双子にも思われないので
あるが大人の勝手な事情からこうして片割れに会うのすら
難儀する事態となった。
ちなみに未だに双子の間でどちらが兄か弟かの決着は着いていない。
「曹丕、入るぞ」

預かった鍵を開ければ曹丕の姿は無い。
リビングには曹丕の荷物らしいものが無造作に投げられている。
耳を澄ませば水が流れる音がするところから
浴室らしかった。
三成はそのまま浴室へと足を進め、ドアをノックする。
「三成か」
程無くして扉が少し開かれ中から、むっとした湯気が舞い込んだ。
「すまない、直ぐに出る」
風呂好きの曹丕である。三成が来る時間までに出るつもりで
長居して仕舞ったのだろう。そんな曹丕の様子に三成はそっと
笑みを漏らし、それから「構わない」と伝えた。
「俺も入る」
云うなり、三成は鞄を放り出し、おもむろに制服を脱ぎ始める。
ぎょ、とした曹丕だが、何、幼い頃からそれこそ中学にあがっても
一緒に入っていた。今更である。
脱ぎ終えた三成が風呂へ入ってくる。
曹丕好みの湯加減は気持ち良さそうだった。
曹丕と離れて暮らすようになってから三成はほとんどシャワーで
済ますことが多い、風呂好きなのは片割れだけだった。
久しぶりの風呂に遠慮なく浴槽へ身を沈めれば曹丕が三成の場所を開けた。
「湯は久しぶりだな」
「お前らしい」
ちゃぷん、と曹丕が湯に口を沈める様は何とも愛嬌がある。
片割れのそんな甘えた様子に三成は、ほっと息を漏らし、
この多忙な片割れの身を案じた。
そっと身を寄せれば一瞬拒むような仕草を見せるが結局
三成の腕の中に曹丕は収まる。
安心しているのだ。
どんなになっても片割れである三成と曹丕は一つだ。
別々の身体を持って生まれてしまったが母の胎内で
一つであったように三成と曹丕は互いに寄り添う。
「疲れているな」
そう呟くと曹丕は「当然だ」と返す。
もう一月も学校を休んだままだ。
流石にそれを危惧した三成がこうして曹丕のマンションへと
訪れることになったのだが、曹丕は曹家の跡取りとしての
仕事がある。この時間を作るのさえ難儀だっただろう。
それを想うと居た堪れなくなって三成は片割れを抱き締める。
暫くそうしていると曹丕が居心地が悪そうに身じろいだ。

「三成・・・」
「なんだ」
言いにくそうにもごもごするので、何事だ、と顔を伺えば
曹丕が僅かに背後の三成に振り返った。
「その・・・当たっているんだが・・・」
何を?と問うまでも無い。三成のナニが、である。
「・・・すまん、勃ってきた・・・」
何故今勃つのか、曹丕はやや呆れ顔で三成を見る。
何も双子の片割れと風呂に入っているときに
勃たなくてもよかろう?とでも云いた気だ。
しかしこればかりはどうしようも無い、何故勃ったのかは
この際置いておいたとしてもこれは生理現象である。
風呂場で済ませることだってある。
曹丕は三成のものを確認するとやや溜息を吐き、それから
「仕方無い」と呟いた。
「抜いてやる」
こういったことは初めてでは無い。
尋常でないと思われるのは承知である。
しかし互いにそういったことを処理し合うことがあった。
最初がいつだったのかもう思い出すことも出来ないが、
曹丕と三成はそれが当然であると思っている。
片割れなのだからこうなるのは当然だと、そう思っている。

曹丕は何も云わず、三成のものを掴むと緩く掻いた。
三成のものを曹丕らしく丁寧に、しかし時に強く力を入れて掻くと
容易く硬度を増す。
三成が少し息を呑むといよいよ固くなってきた。
堪らなくなって三成が立ちあがると「どうした?」と曹丕が顔を上げる。
少し云い澱んでから三成は結局思いついた要求を口にした。
「舐めて欲しい」
流石にこれは初めてだ。
今迄互いに手で処理することはあってもこういったことは云ったことが無い。
だが今日はどうしてもそうして欲しい気分だった。
それがどういった意味を持つのか考えたことも無い、考えたく無い。
しかし、どうしても曹丕にして欲しい。
そんな三成の様子に曹丕は一瞬、躊躇した様子であったが
結局頷いた。
「座れ」
三成を促してから、曹丕は三成の股の間に顔を埋める。
まるで躊躇いの無い仕草に、一瞬曹丕の考えがわからなくなるが、
しかし、次の瞬間納得もできる。
これは見栄だ。このぐらいなんでもないんだという曹丕の矜持である。
そんな片割れの様子に愛しさが増して、含まれたそれが舐められる度に
三成にどうしようも無い疼きが湧いた。
「・・・っく、」
ぬるん、とした舌が咥内が、三成を刺激する。
思った以上に心地好い感覚にこのままずっと、とさえ思うが
身体はそうもいかない。
追い立てられるままに小さく「出る」と呟いてから
曹丕の口内で達した。
出された三成のものを曹丕は床に吐き捨ててから、
口を拭う。それがたまらなく淫靡な気がして三成はぞくりと
背に快感が奔るのを感じた。
「曹丕・・・」
擦れた聲で曹丕を抱きよせてから気付く。
「お前も・・・」
緩く当たるものが何かをはっきり感じて三成は笑った。
「煩い」
三成のを舐めていて曹丕も感じたのか、
勃っている。その確かな感触に三成は曹丕を見つめて
唇を寄せた。

「では次は俺がやろう」
莫迦な、と云いつつも曹丕は弱々しく頷いた。
結局のところ互いに離れることなど出来はしないのだ。
曹丕を引き寄せ、口付ければそれは
絶望の味がした。
このままでは駄目になる。いつか駄目になる
なのに離れることが出来ない愚かな絶望の味がした。

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