03:初めてだからうまくいかない

曹丕の身体を冷たい床に組敷いて貪る。
その衝動はこの上無く背徳的で甘美だった。
帯で手を括り一纏めにしてから
抵抗を潜めた身体を弄る。
( これは酷い事だ )
わかっている、
そんなことわかっている。
三成はこれがどういうことなのか
解って遣っている。
曹丕の身体を蹂躙し、我がものにして、
それでどうなるのか、まるで先が見えぬというのに
止まらない、どの道ただでは済まされない、
今止めたところで行きつく先は絶望に違い無い、
ならば喰ってみるのも一興よ、と
自嘲地味た笑みを漏らし
三成は露わになった曹丕の肌に指を這わした。
首筋を舌で舐め、指で下肢を弄れば、
びくりと跳ねた。
呪詛交じりの言葉ももう無い、
固く眼は閉じられ、その薄い眼は三成を
拒絶している。
それでも、と思う。
( かまわぬ )
この冷たい、感情ひとつさえ見せぬ男の内に
何かを刻めるのなら、構わないと思った。
自分という浅ましい欲を刻めればそれでいいと、

「・・・っ」
口付ければ噛まれた。
諦めた様子でも喰えない男である。
三成の口端から血が落ちる。
それを拭い、三成は行動を再開した。
絶望的な悲壮感に駆られているというのに
身体はこんな状況でも充分欲情している、
これ程までに曹丕を求めている。
眼をきつく閉じたままの曹丕を見下ろし
三成はそのまま曹丕の下肢に指を這わせ
曹丕自身を擦りあげた。
哀しいかな、男というのは安直なもので
矢張り触れれば反応する。
そのままやんわりと握り込み裏筋から上へ上へと
追い上げればたまらないという風に曹丕の
身体が揺れた。
聲など出すものかと殺す様さえ扇情的な男だと
思う。長い絹の髪も白い肌も、
その精悍な面立ちも何もかも皆、三成を
煽っていく。
煽られるままに無遠慮に舌を這わし
曹丕を暴く、徐々に反応を示し始めた身体に
戦慄く曹丕の唇を抉じ開け己の舌と絡ませる。
先程のように咬みつかれてはたまらない、
用心しながらも息も吐かぬ激しさで求めれば
ついに曹丕が折れた。
そのままびくびくと跳ねる肢体を
指で撫ぞり、高らかに主張した曹丕自身の昂りを
解放すれば「噫、」とくぐもった聲が漏れた。
その様に満足して三成は後孔を探る。
流石に何をされるのか悟った曹丕が身を固くするが
大丈夫だ、と囁き指を宛がった。
曹丕の戦慄きは大きくなり、
一言だけ「厭だ」と擦れるような聲で
云う、三成はそのまま指で中を押し広げ
ゆっくりと円を描くように侵食していった。

「っく、、ぁ、、っ」
汗が滴る、曹丕が跳ねる。
慣らしたつもりでも所詮付け焼刃だ
いっそ力のままに貫いて欲しいのかもしれない、
そうすれば痛みは一瞬で終わる、
しかし三成はそうしなかった。
ゆっくり己を穿つように曹丕に沈める。
は、は、と息が漏れ曹丕が痛みに耐えているのが
判る。それでももうやめろ、とは云わなかった。
( 殺されるか )
ずぷり、と漸く全て収めた己自身とその蹂躙に耐える曹丕を見る。
( それもまた仕方あるまい )
こうなってしまってはもう、曹丕を手にする以外に無い、
三成はそのまま律動を開始した。
「・・・っ、、、ッ!!」
激しく揺さぶれば曹丕が耐えきれないと云うように
嗚咽を漏らす。拭えぬほど溢れた唾液が
曹丕の首筋を伝った。
それを舐め上げれば何もかもひとつになる気がして
酷い高揚感に包まれる。
「っ、、、アッ、、、!」
堪え切れない悲鳴が曹丕から上がった。
痛み以外のものを感じているのが屈辱なのか
悔しそうに顔を歪める。
それが何処か悲しくて、またこの男らしくて
( 我ながら酷いことを )
自覚させられる。
しかし込み上げるものは確かな快楽で
三成は酷い締め付けの中へ二度三度と
己を注いだ。

そして最後に思うのだ。
ああ、自分はこの男に覚えてもらいたいのだと、
その他大勢の切り捨てられる者では無く、
石田三成という男を覚えて欲しいのだと、

何故曹丕の元を離れられなかったのか、
遠呂智を内から崩すというのは今となっては最早
言い訳にしか過ぎない、
曹丕を犯し、最も酷い方法で我がものにして
手にした今、詭弁にしか過ぎぬ、
そして悟る。
妲己に引き合わされ初めて遭ったあの時から
己の心は曹丕に奪われていたのだと、
どうしようも無い絶望にも似たこの恋情に
三成は笑みを漏らす。

あの日、見た、薄い瞳の男に
己が全てを奪われていたのだと。

「好きだ」
最後に呟いた言葉を聴く前に曹丕の意識は闇へ呑まれた。

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