09:初めてだから間違えたっていいんだよ

勝利に終わったといえど
敗戦処理は酷いものだった。
敵味方どちらの死体かもわからぬものも多い。
溢れ返る死体や捕虜の処理を三成は指示し
この様子ではまだ暫くかかるだろう。
曹丕の容態も安定はしているものの
早く落ち着ける場所に移動させた方がいい。
敗残兵が襲って来ないとも限らない。
一通りの指示を終えてから
三成は曹丕の天幕へと戻った。

「熱が出たそうだな」
脇の桶から水を汲んで一気に飲み干す。
温いかと思ったが汲まれて直ぐだったのか
まだ充分に冷えていた。
「血が出ているでは無いか」
布がずれたのか、曹丕の傷口から
赤い染みが見える。
煩わしそうに手を払い、不要だと態度で
示す男を無視して三成は曹丕の衣服に手をかけた。
手近な場所に取り換え用に用意されていた
布を取り、血のついた布を取り外す。
傷口はさほど大きく無い癖に
深いらしい傷は見ていて痛々しい。
抵抗する素振りを見せた曹丕だが
ゆっくりと布を巻く三成にそのまま眼を伏せ
するにまかせた。
しっかり布を巻いて端を縛り、そっと
衣服を元に戻す。
「もういいだろう」
出て行け、と云う癖その聲は弱弱しい。
熱の所為なのか肌はしっとりとしていて、
蒸気したような頬は朱がさしていっそう
曹丕の色気を惹き立たせた。
「水を」
喉が渇くのか曹丕が云う。
簡易に用意された卓の上の水差しは空のようだった。
云われるままに先程の桶から水を掬う。
椀に注ぎ、伏せた曹丕を起こそうとするが
曹丕は煩わしそうに息を洩らしただけだった。
辛いのか、誘っているのか、
測り兼ねるが、三成は手にした椀から
水を己の口に注ぎ、そのまま曹丕に口付けた。
厭がるかと思えば以外に抵抗は無い。
こくこくと緩やかに曹丕が喉を動かすのが知れた。
「もっとだ」
その言葉に何処か甘さを感じるのは
何故だろうか、
三成は再び曹丕に口移しで水を与える。
親が子猫に乳を与えるような動作は
酷く官能的に思えた。
もっと、と強請られるままに
曹丕に水を与え、次第に深く舌を絡ませる。
気付けば寝台に身を乗り上げ股の間に足を挟み
深く貪る形になった。
肌を弄ろうとして先程巻いた布が指に触れる。
それに気付いて三成は我に返った。
「すまんっ」
慌てて飛退き口端から伝う水を拭う。
けれども思ったより強い力で曹丕に引き寄せられた。

「お前の眼は節穴か、三成よ」
妖しく哂う男は色気を放ちながら三成に口付けた。

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