夏休みにもなり、いつもと変わり無く、
三成は過ごしている。
昼過ぎに起きて、左近の用意した冷麦を食べ、
それから適当な服を見繕って着替えバイクのキーを手に
「図書館へ行ってくる」
と一言告げてから家を出た。

家に居てもそれなりに暇は潰せたが
昨日ネットで調べた本が気になって
図書館へ行く気になったのだ。
滅多に行く場所では無いが、
夏の暑い時間をやり過ごすのにも
図書館は魅力的に思えた。
気紛れである。
三成はバイクを転がして、図書館まで走り
日差しを遮る場所など見当たらない駐車場に停めてから
図書館のエントランスを潜った。
目当ての本の場所を探す為に検索機の前に立つと
タイトルリストが出てくる。
それを手際良い動作で処理しながら、目当ての本の場所を
確認し、三成は本のある書架へと向かった。

「・・・あれ・・・?」
本がある筈の場所に無い。
指で本の文字を追ってみても矢張り無かった。
「貸出中だったか?」
もう一度調べようと今度はカウンターの
職員に訊いてみるが、答えは簡潔だった。
「貸出中にはなっておりませんので、図書館内には
あると思いますが、どなたかが読まれているのかもしれません」
通り一遍の定型文に見込が外れたと三成がふらりと
手近な椅子に腰かける。
宛てが外れた、さてどうしようか、と
ふ、と顔を上げれば斜め前の席に知った顔を見付ける。

( 曹子桓・・・! )
がた、と思わず立ちそうになるが、
其処は堪える。
( こんなところに居るなんて聴いてないぞ! )
凄い偶然もあるものである。
この間のコンビニだけでなく、まさかの図書館である。
しかし、双方共に、勉強は出来るのだ、
いかな極道と云えど、図書館に居ても不思議は無い。
ふと気に成って曹丕の手にある本を見る。
( まさか・・・! )
斜めに屈みながら(何ともマヌケな格好であるが
この際気にしないで貰いたい)
本の表紙を確認すれば、

「その本、、、!俺が借りたいやつだ・・・!」
思わず口にしていた。
小声では無いので勿論本に視線を向けていた
曹丕も顔を上げる。
眉間に皺が浮かんだかと思うと一気に驚愕へと変わる。
「石田・・・三成か・・・」
どうして此処に、とやや驚きが隠せない様子で曹丕が呟く。
「それは俺のセリフだ・・・」
聲を出すべきでは無かったとやや後悔してから
三成は曹丕を見る。
「それでこの本が?」
「厭、ああ、もう、嘘を云っても仕方無いか、
その本を探して此処へ来た」
図書館なのだから当然だろう?と暗に含ませて云うと
其処で曹丕が得心したように微かに笑みを浮かべた。
予想していなかっただけに三成が呆気に取られていると、
曹丕が立ちあがる。
「私が借りた後で良ければ回すが、」
その言葉の意味を理解する前に、ああ、とか云、とか
思わず頷いて仕舞う。
「では貸出手続きをしてくる、読み終わるのにそうかからないから
連絡先を教えてくれ」
何がなんだかわからないままに、こうして
三成は曹丕の携帯番号とメールアドレスをGETした。


04:昼下がりの
図書館


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