ぐったりした様子の子桓に布団を掛けてやり、
煙草に火を点ける。
なんというか感想は、ちょっと別の世界を見た気分だ。
しかし正直に良かった。
これならもう一度、という欲すら出るが、
その浅ましさに、もう少し余裕を持て、と
プライドが自制をかける。
このまま行くとこの男に惚れてしまいそうだ。
いかんいかん、と顔を顰めて、眠る子桓を見やった。

( しかし・・・引っかかる・・・ )
そう、この出所不明の美男だ。
遭った時から感じていたことだが、
この男、尽くされ慣れている。
愛人だったとするなら、余程愛されていたのだろうか、
この愛人説が今のところ三成の中で有力だったが、
(でなければカードの説明がつかない、カードを
使うことを明らかに戸惑っている様子ということは、
何者かから足取りを辿られるのを憂慮してのことだろう)
どうしてもそれだけでは拭えない何かを感じる。
如何にも誰か、常に周りに仕えている者が居たとしか
思えないような立ち居振る舞い、そんな仕草を子桓はする。
そうなると推測できるのは、厄介な事態だ。
この甘やかし様は相当の入れ込みだったのだろう、
そうなってくると子桓の相手は組長クラスなのかもしれない、
自分の想像に、三成はどうか、これが当たっていませんように、と
内心おおいに溜息を吐いた。
成り行きとは云え、子桓に手を出したのは事実だ。
誘ったのは子桓だったとしても厄介な相手では面倒事に
なるかもしれない。
三成にできるのは、子桓の云う通り、できるだけ、
匿って、そして尚且つ、三成サイドに益が出るように、
せいぜい、この美男に稼いで貰うだけである。
拾いものだが、


04:どうにもこの男、
ハイリスク
ハイリターン



の香がする。
「ん・・・」
子桓が身を捩ったので三成はその頬を撫ぜた。
それが心地良かったのか、うっすら子桓が眼を開ける。
その様子に三成はどきり、とした。
中坊でもあるまいに、しかし、純粋な何かが揺れ動いた。
よく見れば子桓の眼の色は薄い青のようだった。
何色かと言葉で表現するのは難しいが、それがこの男の
不思議な雰囲気を形どっているのだと理解する。
眼を見ているのに気づいたのか子桓が眼を細めた。
「美しいものだな」
素直に感想を述べれば、子桓は少し笑みを含ませる。
「よく云われる」
「だろうな」
称賛など云われ慣れていそうだ、と立ちあがり、
冷蔵庫にあったビールを子桓に投げた。
まだ冷蔵庫にはたっぷりとビールがある。
このあたりの管理は左近が行っているので完璧だ。
台所で簡単なつまみを用意して差し出せば
子桓は上品にそれを口に運んだ。

「で、どうだったのだ」
身体のことを云っているのだろう、
正直に「良かった」と云えば、したり顔で、
それみたことか、と笑われた。
「心配はするな、損はさせぬ」
子桓は三成の危惧を感じ取ったのか、
悪戯が成功したような子供の顔をして
意地悪く口端を歪めた。
「パソコンを用意してもらいたい」
かくしてこの広い部屋に三成は子桓と住むことになった。

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